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ご馳走の載ったトレイをベッド脇の床頭台の上に置いた。
「龍矢?」
俺はベッドに腰掛けたまま、すぐ側の時任さんを見上げた。
「通わせてもらえるならこのまま江南中に戻ります。俺は逃げません」
自分がやった事にちゃんと向き合おう。
ここで逃げたら、いつか母ちゃんに向こうの世界で会えた時に顔向けが出来ない様な気がする。
龍矢…龍殺しの矢なんてすごい名前をもらって生まれてきたのに、とんだ名前負けだと。
「そうか」
時任さんは笑った。笑って俺の頭を撫でてくれた。今更だけど、俺の頭を撫でた人は母ちゃんと時任さんだけだ。
「龍矢は自分で道を選んだんだ。楽な道を選ばなかった分、きっと辛いぞ」
「はい」
それは覚悟の上です。
「実は同じ事を悠里にも聞いたんだ、悠里はお兄ちゃんと一緒なら他はどうでもいいそうだ」
時任さんが又笑う。
悠里…こんなヤバい兄貴なのに、今回もいっぱい泣いたんだろうに。
それでもお前は、こんな兄ちゃんと居たいのか…?
「龍矢と悠里はまだ未成年だから、後見人の俺が自分の家に引き取って別の中学に通わせようと思っていたんだ。だが龍矢達は自分の家に戻るんだな」
あ…そうか、俺達は保護者が居ないからあの家に住み続けても大丈夫なんだろうか。母ちゃんは例の逃げた親戚に頼むつもりだったみたいだけど。
「あのアパートは俺が保証人になって契約を組み直すから大丈夫だ。初めのうちは二人だけでちゃんと暮らして行けるのか俺がちゃんと見ていく。何かあったら必ず相談をするんだ。ダメだと思ったらすぐにうちに引き取る」
「はい」
「生活費は毎月分を龍矢名義の口座に振り込む。俺が管理するお母さんの遺産からだ、大事に使えよ。それから急な出費のある時は…」
母ちゃん…母ちゃんがこの弁護士さんを選んでくれた事に感謝するよ。
俺達にこの人を巡り合わせてくれた奇跡にも
感謝するーーー
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