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その後の中学校生活の様子は殆ど予想通り。
確かにしばらくの間、俺は一部の生徒たちの間では噂に上っていたようだったが、直接それを確かめようと聞いてくる度胸のある生徒はさすがにいなかった。
そのうち別な話題が出てくるとそっちに飛びついて行くのも自然の流れだったんだろう。
だが学校側は俺を腫れ物でも扱うような感じで、結局卒業までそんな状況は続いた。
一番心配していた悠里だが、それでも目立ったいじめのようなものには遭わなかったという。それが何よりホッとした。
マンガやアニメが好きな悠里にはそれなり友達も出来たらしいから、その連中の中では悠里は一人では無かったのだ。
俺はなるべく目立たないように中学での残り2年を過ごし、卒業後は自宅から一番近くにあった県立いわき南農業高校に進学を決めた。
「お兄ちゃん、南農に行くの?お花作るの?」
悠里はのんきにそう言うけど、こっちはもっと切実な問題だ。
「安い野菜は中国産ばかりだろ、この時代は安全な野菜は自分で作るしかないんだ。目標、うちで食う野菜はなるべく自給自足だ」
何よりお前にはちゃんとした物を食わせたい。肉魚は結局買うしかない、せめて野菜だけは。
一応ベランダでガーデニング…にはほど遠い家庭菜園はやっているけど、どうも成績はよろしくない。これはちゃんと誰かに学ばないと。
俺はまだ、自分が将来どんな仕事に就きたいのかを決めていない。
俺に出来ることなどきっとそんなに多くは無い。
だから高校での三年間で色々やって、それを決めていく。
「うん、分かった。お兄ちゃん高校合格おめでとう」
「おう、ありがとうな」
それにしても。
「悠里、そのTシャツ短くないか?スカートも」
「えー?これ気に入ってるのに。ダメなのよ、何でもすぐ短くなっちゃって。また背が伸びちゃった」
「そうか、また…」
なんでお前はいつの間にか俺よりデカくなってんだよ!!
たった3センチ位で俺を見下ろすんじゃねぇ!!
…もっと牛乳を飲もう。
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