act.4 信頼

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   あの場に突然出現した俺を訝しがった出雲から色々と聞かれた。俺がネイティブの親父さんの指示だと伝えたら、すぐに全てを納得したらしい。  俺も出雲から今回の騒ぎの事情を聞いた。  有名な展覧会に絵が入賞した美音さんへの悪意ある個人情報の流出があったと。それは様々なSNSに複数のアカウント名でばらまかれた。  氏名や学校名、挙句に細かな住所まで。それらはすぐに削除要請が出されたが、一部はマスコミやネット民とやらの目に晒された。  だが問題はそれだけじゃない。幼い美音さんを虐待してその他諸々の罪も合わせて刑務所に服役していたという実父が、その情報を元に彼女を探し出そうとしているらしいのだ。  出雲やその家族にしてみたらとんでもない話だ。 「出雲、親父さんがな」  俺に伝わる情報は多くはない。親父さん自身も預言者じゃないから、きっと漂う微かな悪意からそれを読み取っているだけだ。 「暫くは気をつけろって言ってる、少なくとも春先まで」  もっと明確な情報が欲しいのは俺も出雲も同じだ。    それでも俺は、出雲と美音さんの危機に出来るだけのことをしたい。  それは親父さんに頼まれたからとかじゃなく、俺で役に立つことがあるなら俺は動きたいんだ。  出雲は美音さんを護るために命懸けで戦うつもりでいるから、俺はそれに付き合うことに決めた。  それが俺の友達に対する矜恃だから。
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