act.4 信頼

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 その後も警戒の日は続いて、出雲はどこにも行けなくなった美音さんを気づかってうちの学校の温室に連れて来たりしている。  悠里や深雪と楽しそうに絵を描く所を俺も一緒に見守っていた。  本当に美音さんは絵を描くことが大好きなんだな、うちの妹にも色々と教えてくれている。  優しくて穏やかで、本当は俺達より二才も歳上だと出雲が内緒で教えてくれた。  だからという訳では無いが、悠里にとって美音さんは憧れのお姉さんのようなものらしい。一緒にいるととても楽しそうだ。  このまま何事もなく過ぎてくれれば良いのにと心の底から思う。  だが、出雲のネイティブの親父さんは最近ずっと美音さんの傍にいる。それ程油断ならない状況だと言うことか。  ーーーそしてその時は来てしまった。    出雲たちと別れて、俺と悠里が家に着いたばかりの時だ。 『頼む!あの子の所へ!!』  突然の親父さんの緊迫した声に弾かれ、俺はバイクのヘルメットを手に取った。 「お兄ちゃん?」 「出雲の所に行く!」 「分かった、気をつけて!」  悠里にはもう大体の事情は話してある、俺が何かを感じ取ったのも分かってる。 『悪意だ、とんでもない悪意があの子達の元に向かってる』  走りながらも親父さんの緊張した声が耳に届く。  美音さんの実父とかいうヤツだろうか、美音さんに対しての虐待の前科があるとんでもない男。  目的はきっと美音さんの連れ去りだ。そいつは美音さんにかなりの執着を持っていると聞いた。  出雲は何があっても美音さんを護るだろう、それこそ手段選ばずだ。  絶対、間に合わせる。  出雲の家までの夕暮れの裏道を、とんでもないスピードで駆け抜けた。 fe71fde9-293e-4e63-9db2-45dadec02b35  
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