act.4 信頼

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   既に出雲家の前では修羅場が始まっていた。  辿り着いたその場所では二人の見知らぬ男が倒れていた。目の端には深雪をその腕に抱いてしゃがみこむ仁科も。  そして俺の前には車で逃げようとする男が。  誰が逃がすかっ!!!  開けた運転席のドアごとその男を吹っ飛ばした。  かなり派手な音がして俺も転倒するが、受け身を取ってすぐに立ち上がる。俺に轢かれた男は状況が飲み込めずに混乱したまま倒れている。  すかさずそいつの脇腹や肋骨の辺りにそのまま何発も蹴りを入れた。立ち上がる隙を一切与えず、ついでにあちこち踏みまくる。カエルが潰された様な声を上げてもこっちはお構い無しだ。  深雪の仁科を呼ぶ声で余計に力が入る、こいつらふざけやがって…!!  そいつが血反吐を吐いて動かなくなるまで俺は蹴り続けた。  その時、別のやつがドアの無い車の運転席に中から乗り込んだのが見えた。しまった、まだいたのか!? 「ウォルフ、その車を止めろ!!」  昂輝さんの声でそこに現れたウォルフが動く。  車のボンネットに飛びついてフロントガラスを拳で殴った。視界を失った車がすぐ傍の側壁に当たって自爆。中から引きづり出された男は衝撃でぐったり。  そこにウォルフから顔面にトドメの数発を貰って気を失った。すげぇな、ただのJKマニアじゃないんだあの男。  そして、車の後部座席から逃げようとしていた年配の男。他が若いチンピラばかりなのにそいつだけオヤジだ、こいつが例の美音さんの虐待実父か!?  当然回り込んだ出雲がそいつを引き倒した。  馬乗りになってそのオヤジを何度も殴り付ける。 「この野郎っ!!」  適当な所で止めないとそいつを殺してしまう、と俺が思った所で美音さんが出雲の手を取ってそれを止めた。 「こんな人、拓海が殴る価値もないわ」  美音さんの凛としたその声を俺も聞いた。  その後、その凶悪な父親に堂々と対峙する美音さん。最後には緊張の糸が切れて気を失ってしまったけれど。  出雲の愛する美音さんは、護られているばかりの人じゃない。  本当はとても強い人なんだと、俺は改めて知った。 f6da12fa-256f-41b9-9ca3-b1ee1c6022c9
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