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その後、やって来た警察が美音さんの実父と思しき男と、誘拐未遂実行犯の連中が全員失神昏倒か茫然自失の状態で血だらけのまま救急車とパトカーで連行されて行った。
出雲は気を失った美音さんを大事そうに抱えて家に入った。
俺は仁科の様子が気になって、深雪の肩を抱いている仁科の頭をワサワサ探る。
「北くん?」
「何ヶ所か皮下出血になってる、タンコブ位で済むと良いが」
結構酷く殴られたか、だが相手は素手だから外傷出血とかしていないな。それが不幸中の幸いか。
俺が見た時、仁科は小柄な深雪を連中に取られまいとして必死に抱きすくめた姿のまましゃがみこんでいた。偉かったぞ仁科。
「詳しいね、北くん」
まぁ色々と。俺に降り掛かってくる火の粉は中一の時のアレだけじゃ無かったから。
「よし、中で治療しよう」
二人を連れて俺も出雲の家に入った。
家の中で俺は救急箱を借りて、口の端を切っていた仁科の血止めをしたりと治療していた。だが間もなく出雲共々外の警察官に呼ばれてしまった。
ヤバいな、今頃過剰防衛の自覚が(・_・;)俺はあいつの肋骨を何本も蹴り折っている。下手すると手足の骨もちょっと。ついでに出雲の方も派手に相手の右腕をへし折っていたし。
どう誤魔化そう、なんせ俺はある意味前科持ち。
「無理だと思う」
正当防衛を主張しようという俺達に仁科が妙に冷静だ、もうしゃあないわ。
外で事情を聞かれていたら、そこに出雲の大阪の親父さんと時任さんまで現れて。
「あ、やべ」
修羅場を見られた俺はこっそり逃げ出そうとしたが、あっさりその場で時任さんに捕まった。
「だからお前はなんでそういう無茶をするんだ!!」
「すいません」
バカ息子バカ息子と連呼され散々怒られた。そして出雲程では無いが、時任さんにギュッとハグされた。照れる。
「怒られた」
「当たり前だ」
うん、でもさ出雲、俺本当は嬉しいんだ。
あの時以来、時任さんにバカ息子って言われる度に実はちょっとだけ嬉しい。
辺りを見廻したが、さっきまで事の成り行きを厳しい顔で見守っていたネイティブの親父さんがいなかった。弁護士の親父さんが来たんで、安心して消えたみたいだ。
あの人は生者と死者の領域をちゃんとわきまえている。
だから自分が歯がゆくて苦しい思いをするのを承知で、それでも出雲を見守っているのだ。
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