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そこからの事は、実は余りよく覚えていない。
気が付いたら、目の前に泡を吹いて倒れているあいつがいた。
血だらけで白目を向いている。あぅあぅと言葉にならない声で唸るだけだ。
「貴様…涼子の長男の…!!」
怒りで言葉も出ないのか、こいつの親父がその禿頭を怒りで真っ赤にして俺を遠巻きにしている。
その後ろにはブルブルと震える見覚えのあるクソババア。
「けっ警察呼んだからね!このキチガイ…!!よくもうちの息子をっ!!」
「うっせぇクソババァ」
キチガイはどっちだ、お前ら幼い悠里に寄ってたかってなにをしやがった…!!
「この…!!」
禿頭が飛びかかって来た。
俺は鉄パイプを投げ捨ててハゲを素手で迎え討った。
軽く2、3発こづいただけで沈んだハゲと泡吹虫のババァを置いてその家を出た。
さっき俺が家のガラスを叩き割った音と、ババァの叫び声に近所の住人が集まって来ていた。
遠くの方からパトカーのサイレンも聞こえた。
「あ…ヤバいキャシュカード持ったままだ」
このまま捕まったら悠里が困る、メシが食えなくなる。せっかく母ちゃんが俺の名前で作ってくれたうちのキャシュカード、しばらく暮らせるだけの金が入っているのに。
俺は暗がりに紛れてその連中をかき分け、壁際に立て掛けてあった自分の自転車に乗った。
とりあえず一度家に帰ろう。
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