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家に着いたら悠里が起きていて、血だらけの俺を見て真っ青になった。
「お兄ちゃん…!!なんでそんなケガをしてるの!?」
ケガ?ああ、あの引きこもりが生意気に抵抗しやがったからな。でも大丈夫だ、殆ど返り血…いや、俺もちょっと怪我をしてるか。
「大丈夫だ悠里、大したケガじゃないから。それよりこれ」
悠里の手にキャシュカードを握らせる。
「これを肌見放さず持ってろ、暗証番号は俺達の誕生日だ」
「お兄ちゃん…?」
「兄ちゃんはちょっと行くとこがあるんだ、ちゃんといい子で待ってろよ」
「やだっ!!一緒に行く!!お兄ちゃんと一緒に行くの!!」
俺の身に何か起こっていることは分かっているんだな。
「いいから待ってろ、兄ちゃんはこれから警察に行かなきゃならないんだ。時間は掛かると思うけど必ずお前の所に帰って来るから」
「お兄ちゃん、一体何やったのよぅ!!なんで警察に捕まるような事をやったのよぅ!!ばかぁ!!」
「悠里…」
「私を置いてっちゃやだ…!!悠里をひとりにしないで!!嫌だお兄ちゃん…!!」
それでも泣いて追いかけて来ようとする悠里を振りほどいて家から出た。
ここでも遠くからパトカーのサイレンが聞こえた。
警察に捕まるのは怖くなかったと思う。どうせ逃げ切れないのはわかっている。
ただ俺は、それを悠里に見せたく無かったんだ。
俺は自転車を漕いで、自分の家から一番近い警察署に向かった。
これが俺のまだ13年しか生きてなかった人生の中で、一番長い夜の始まりだった。
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