act.1 起承

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 血だらけで警察署に現れた俺は、身元の照会の後に色々尋問され、その後に大人と同じ地下の留置場にブチ込まれた。  本当にブチ込まれるって表現がぴったり。  俺はその非道な手口から、未成年で有りながら凶悪犯の位置づけでの対応になったらしい。  当然、警察官の心証は悪い。みんな俺をゴミでも見るみたいに扱った。  そんなのは別に良い、悠里さえ無事なら。  悠里…ゴメンな。  兄ちゃん、どうしてもあいつらが許せなかったんだ。  あの時のお前が、どんな目に遭って兄ちゃんのところにやっと戻ってきたのか。 「おにいちゃんどこにいってたの」っていう言葉の意味がやっと分かったんだ。  お前はあいつにいっぱい傷付けられていたんだな。あの時、助けてあげられなくてゴメンな。  護ってあげられなくてゴメンな。  ゴメンな、悠里…  落ち着いてきたら頭がすごく痛かった。そこに触れたらその手がベッタリと血で汚れた。  冷たい床の上に体育座りで座って、自分の膝に顔を埋めていた長くて冷たい夜だった。 40a302af-7b57-49d6-87b8-1e2af44a2be6  
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