落ちる女

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 脩介の部屋は、布団と小さな卓と、身の回りのものを置けばすぐにいっぱいになってしまう八畳間と、ミニキッチンとユニットバストイレがあるだけの、一ルームマンションだ。駅からは徒歩十分あまり、近くにコンビニもある。八階という高さは学生には贅沢じゃないか、と親は渋ったが、内見に来たとき、脩介は一目でここが良いと思った。周囲に高い建物がなく、眺望が開けている。自分でもバイトをして稼ぐから、ここに住みたい、と主張したのだった。  それが今、こんなことになるとは。   風が吹きつけてくるベランダに立ちながら、脩介は迷った。どうしよう、こういう場合、何をしたらいんだろう……。すぐに下まで降りて行って、それをみつけて、通報するべきなんだろうか。  でも、動けない。女が落ちて行った暗闇から、何かが這い上がってくるようで、足がすくんだ。 たっぷり三十分はそうしていただろうか。ようやく部屋へ戻ると、へたへたと、敷きっぱなしの布団の上に座り込んだ。身体は冷えきっている。 「電話、電話しなきゃ……警察……」   そう思うのだが、体が動かない。立ち上がろうとすると、さっきの女の、黒い瞳が思い出された。
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