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この高さから落ちたのだ、まず助からないだろう。まして女は、真っ逆さまに頭を下に向けていた。多分、即死だ。それなら、通報が一刻を争う、ということはないだろう。
脩介は、外の夜と同じように靄がかかってきた頭の中で、自分にそう言い聞かせた。
きっと誰かが見つけて、通報してくれるよ……。
脩介は、そのまま布団の上に倒れこみ、意識を失った。
開いたカーテンから差し込む日の光で、目を覚ました。目覚めても、しばらくの間、ぼうっとしていた。
くしゃみが出て、鼻をすする。どうやら、昨日布団をかけないで寝てしまったらしい。
きのう、どうしたんだっけ。何があったんだっけ……。
答えはすぐにみつかった。昨日の夜の、落ちる女の姿が、瞼の裏に鮮やかに蘇る。
身体を起こし、布団から床に足をつけると、フローリングの冷たさが頭をはっきりさせてくれた。身体が震えるのを抑えつつ、なんとか平常心を保ちながら、窓を開けた。
いつも通りの光景。都心の靄のような空気が体を包む。ぼんやりと晴れた空に、薄い雲がかかっている。
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