落ちる女

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 きっとあれはもう、誰かに発見されているはずだ。ベランダに出て、手すりから身を乗り出して、下を覗いた。  何もなかった。下にはいつもと同じ、灰色のアスファルトがあるだけだった。死体はもちろん、血の跡を示す染みもない。  一瞬、そんなバカな、という思いが頭を掠めた。そんなバカな、何もないなんて。だけどすぐに思い直した。多分もう誰かが見つけて通報して、きれいに片づけられたのだろう。 「大丈夫だ……」   つぶやいて、脩介は部屋の中に戻った。  ぎりぎりで一限の最後に間に合った。震えそうになる手を、なんとか動かしながら支度していたら、遅くなってしまったのだ。電車の中でスマホでニュースを検索してみたが、よくわからなかった。 講堂の後ろから入ると、一番後ろの席に座った。  落ち着かなかった。講義を聞いても頭に入ってこない。ため息をついて、脩介は外に出た。学食に足を向けたが、すぐにその足を駅に向けた。今日はたぶん、学校にいても、まともに授業が受けられそうにない。  夕方のバイトまで時間が空いてしまった。こういうとき、すぐに連絡をとれる友達でもいれば、と思う。
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