落ちる女

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 脩介は、内気で口下手な性格で、友達は多くない。すぐに連絡しておち合ってカラオケに行く、なんてやったことがない。大学二年生にもなって、同級生の中には遊んでいるものも多いが、そういうのは苦手だった。高校のときは彼女がいたこともがあったが、大学に入ってからは特に縁はない。そういう時間も、お金の余裕もなかった。  サボるなんて初めてかもしれないな、と思いながら、部屋に帰る気もしなかった。脩介は、近くの公園に足を向けた。  昼間の公園は、小さい子を連れた親子連れか、高齢者ばかりだった。脩介のような若者は少ない。手持ち無沙汰をまぎらわすため、古い木のベンチに座り、教科書を広げた。だけど目が細かい文字を追うことができず、すぐに閉じた。スマホを開く。すぐに閉じる。  そわそわする。落ち着かなかった。  バイトを終えると、帰宅の途についた。バイト先は、駅の近くのコンビニだ。二十二時に仕事を終えて店を出ると、外は肌寒い。まだコートが必要というほどではないが、空気は冷えている。  帰ると、いつも通り、シャワーだけの入浴を済ませ、スーパーで値落ちした夕食を食べる。  いつも通りでないのは、心のほうだった。
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