落ちる女

7/24

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 布団に座ってテレビをつける。芸人が何かしている。スマホを見る。ニュースをのぞく。昨日の時間に近づいていく。  はっと、目を覚ました。いつの間にか眠ってしまったらしい。 何かを感じた。時計を見ると、〇時二十三分、きのうと同じ時間だった。  何かに引き寄せられるようにして、窓に近づいた。まさか、という予感があった。左手が窓に触れる。ガラスが氷のように冷たい。青い手が、背中にすっと触れたような気がした。  そのときだった。それはきのうと同じように、ゆっくりと、夢の中にいるようだった。  現実の周りの何もかも、スマホもテレビも引いていった。ただ、触れている冷たい窓ガラスだけを残して。  最初に、二本の白い腕。それから小さな、青い白い顔。その後ろに、扇のように広がった長い黒髪。そして、闇の中に咲いた大きなお花のような、白いワンピース。  窓の外に、女が現れた。女は、昨夜と同じように、脩介の前を落ちていく。下へ下へとゆっくりと、映画のコマ送りのように。 目の前でそれを見ながら、脩介は動けなかった。まるで誰かがスイッチを切って、時間を止めてしまったみたいに。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加