私を待っていたもの

10/12

81人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 私は勤務時間を計算して、1日17時間労働ということに驚いた。 「鬼出勤って言うんだ。」 「そう、風俗店では、鬼出勤って言うの。  鬼出勤してると、疲れててサービス悪いと敬遠されたりして、最近辛くなってきた。  誰か風俗とは関係ない人と話したくなって、でも、ベタベタとくっついてくる人も嫌で、それで、ここで働いてみた。  私、桐生さんに会えて、本当に幸せ。これからも話し相手になってね。絶対ね。ずっとね。」  私は、一瞬、微笑んだが、すぐに顔を歪ませた。 「いや、借金地獄から抜け出せばいいだけだろ。金さえ返せば、私とも縁が切れる。あと、いくらなんだ?」   「やっとで600万円きったんだよ。桐生さん、払ってくれるの?」  悪戯(いたずら)っぽく笑う彼女は、私の返事を知っている。 「そんなお(かね)、あるわけないだろ。」 「知ってるよ〜。貧乏生活の師匠!」そう言ってケラケラ笑う彼女を見て、頬が緩む。 「次のお店、いいとこあるの?」  それが心配だった。実入(みい)りのいい店があるといいのだがと。 「高級店で稼げたらいいけどね〜。身長が足りないんだよね。」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加