私を待っていたもの

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 仕事が終わると、アパートで、私は何年かぶりの酒を飲んだ。    その日は早い時間に寝た。すぐに起こされるかもしれないと思った。  寂しがり屋の彼女のことだから、今晩にでも、電話するだろうと予測しながら。  次の日、私を待っていたもの……  朝、ドアを叩く音。  ドンドン、ドンドン 「おはようございま〜す。ドアを開けてくださ〜い。」  私が、玄関ドアを開けると屈強な男が3人立っていた。 「指名手配犯、二階堂真也、アパートの周囲は警察官が包囲している。もう逃げられないぞ。四つ菱銀行爆破事件の爆発物取締罰則違反の容疑で逮捕する。」  彼女に渡した電話番号は、私の指名手配ポスターの通報窓口。そして私には、600万円の懸賞金がついている。  もう、30年も前の犯罪。本当ならとっくに時効だが、共犯者が一旦逮捕されたのに逃亡した。公判継続中ということで時効は停止して、おそらくこの先、一生、時効になることはない。  最近、爆弾魔・二階堂真也の名を語っての爆破予告が数件あった。そのため、300万円だった懸賞金は、600万円に跳ね上がった。  今は、通報した彼女が懸賞金をもらい、借金を返済して、普通の生活に戻れれば、私は、どうなってもいいと思っていた。  彼女の借金残高が600万円以下と聞いた時には、本当に安堵(あんど)した。彼女の借金の話を聞いてから、久々に活動した甲斐(かい)があったというものだ。  マリリンモンローが言っていた。   『私はずっと「私は愛されない人間なんだ」と思っていた。  でも、もっと不幸だったのは、  私自身、心から人を愛そうとしなかったこと。』  正確な言葉は覚えていないが、たしかそんな感じだった。  思えば、彼女に出会った時から、恋に落ちていた。  彼女と過ごす時間は、私の人生の中で一番輝いていた。 「行くぞ」と言う刑事の言葉に、ニタリと笑みで答えた。  愛って、自分を犠牲にできるんですねと目の前の刑事に語りそうになった自分の滑稽(こっけい)さを失笑したのだった。 了
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