私を待っていたもの

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 ロッカールームに入り、ロッカーから弁当を取り出し、廊下に出ると、お弁当を持ってキョロキョロする小林さんが目に止まる。手を振って手招きすると、うさぎのように飛んでくる。  工場のみんなは、大きな休憩室で、集団でお昼ご飯を食べる。私は主任として小さな部屋をもらっている。  小林さんには、みんなと同じところでも、私の部屋でも、どちらでもいいと言ったところ、私の部屋がいいと言う。  主任室に入り、食事にする。  目の前に座り、えへへと言いながら、お弁当の蓋を開けるのを見て、凍りついた。言葉を失い、彼女の弁当を見たまま動けなくなった。 「えへへ、お料理、あんまり上手じゃなくて」  その言葉を聞いて、笑顔を返す。 「いや、自分で作るだけすごいと思いますよ。」  彼女の弁当は、半分がご飯、そしてもう半分はもやし炒めだった。おそらく、もやしだけを塩胡椒で炒めただけ。男が作ると油を入れすぎてギトギトになるが、彼女のもやし炒めは油の光がない。  お金に困っているのだろう。もやしは安くて栄養がある。  自分の昔の食生活を思い出し、苦笑いをする、
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