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そう言う彼女の笑顔もいつもと違いぎこちない。
「そ、そうか? 私は、いつでも笑顔がステキな桐生さんなのだが。」
「プッ」
彼女は吹き出した。
そして、視線を右に逸らした。いつのまにか真面目な顔をして遠くを見て、大きなため息をついた。しばらく、そのまま動かない彼女。私は、ただ、じっと待った。
「私ね」彼女は、目線を逸らしたまま言った。「風俗嬢なの。」
声が出なかった。彼女は、それを予測していたかのように言葉を続けた。
「ちょっとトラブっちゃって、この傷。お店を変わらないといけない。新しいお店が見つかるまで、収入減だから早く見つけなくちゃって思っているところ。」
目線を合わせず、顔を右に向けて遠くを見る彼女。
「そっか。昼はここで、夜はお店で……ちゃんと寝てる?」
彼女は、私の顔を見た。
「うん、夕方とか、お店でも暇な時に待機室で寝てるよ。
あー、私、仕事中によくあくびしてましたもんね。仕事中は、マスクしてたから、桐生さんの表情はよくはわからないけど、桐生さん、私のあくびを見て目が笑ってた。
普通の人なら、睨むんだろうけどね。
桐生さんが、あんまり優しいから、私の秘密、打ち明けちゃった。こんなこと、桐生さんにしか言えない。」
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