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火車
これは、仕事上で知り合った男性が話してくれた、高校時代に体験した話なんですけどね。
今はテレビ業界の仕事をしてる人間なんですが、仮に彼のことをA君としときましょう。
A君、ある日の学校からの帰り道、近所にあった病院の前でちょっと気になるものを見かけたらしいんです。
それなりに大きな病院だったんですがね。その病院の正面入口の前に、なんだか妙に目立つ真っ赤な車が止まっていたらしいんです。
夕暮れ時で、辺りは真っ赤な夕日に染まってるんですよ。でも、その夕日のせいじゃなく、その車自体がとにかく真っ赤な色をしているんですね。
前半分はリムジンみたいになってるんですがね、後半分には窓がなくて、バンみたいに荷物でも載せられるようになっているのか? 扁平で縦に長い感じの車です。
病院の前を通りかかったA君が、なんとなくその赤い車に目を留めていると、その赤い車がすー…っと動き出したらしいんです。
そのまま病院前のロータリーをぐるっと回り、方向転換して自分のいる道路の方へ出てくるんで、ぶA君はぶつからないよう、その場で足を止めたんです。
そうしたら、彼の前をつー…っと車は通り過ぎて行ったんですが、その時、運転席に乗ってる男と目が合ったんだ。
「ひっ……!」
その瞬間、A君はぞわぞわ…と全身に鳥肌が立って、まるで金縛りにでもあったかのように固まってしまったって言うんです。
その男、中高年ぐらいの年齢だったんですが、車と同じように真っ赤な格好をしていたんですよ。真っ赤なスーツにネクタイも赤い色、赤いソフト帽までかぶってる……その上、A君を見つめるその二つの目も、なんだか赤く光っているように見えるんですよね。
そんな黒づくめならぬ赤づくめの男が、目が合うなりニタァって笑って、そのまま車を滑らせるように進めると、大通りに出て走り去って行ってしまう……。
ほんの一瞬のことでしたし、それ以上に何かあったってわけじゃないんですが、A君、なんだか嫌に気持ちの悪さを感じて、強く印象に残ったそうです。
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