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「…なんまいだぶう! なんまいだぶう…なんまいだぶう! なんまいだぶう…!」
必死にお地蔵を拝むA君ですが、背後からはブウウン…ブウウウウン…!と、大きなエンジン音を響かせてなおも車が迫って来るのがわかるんです。
「…なんまいだぶう! なんまいだぶう……」
その気配と恐怖に思わず振り返ったA君の目に、すぐそばまで迫っていた車の運転席で、あの赤づくめの男のニヤリと笑う顔か映った瞬間。
「ひいいっ…!」
ガシャァアアアーン…! と大きな音が鳴り響いて、A君の視界は暗転しました。
「……ハッ! ……ハァ…ハァ…ハァ…ハァ……」
気がつくと、いつものように全身汗びっしょりで、ベッドの上に寝ていたそうです。
「俺、生きてるのか……?」
てっきり死んだかと思ったんですが、どうやらまだ生きてるんです。これまでと同じように目を覚ましただけなんですね。
そうか……あの赤い車に撥ねれたら死ぬんだと思ってたけど、そうじゃなかったんだ……。
てっきり死ぬんだと思い込んでいた自分の予想が外れ、ああ、よかったあ……と溜息を吐いたその時。
〝命拾いしたな……〟
そんなしわがれた男の声が、A君の耳もとで聞こえたんです。
その声に思わずそちらを振り向くと、すぐ横にあの赤い男が、自分の顔を覗き込むようにして座ってるんだ。
A君、そのまま気を失って、朝もだいぶ遅くなってから、寝坊していると思った母親の起こす声で目を覚ましたそうです……。
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