何も聞こえない夜をあなたに

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 それからの日々はよく分からない。いつかの声に、確かに目覚めない方が良かったと伝える夢をみていた気がする。たまにマキの声が聞こえた時だけ覚醒した。 「ふざけんなよっ! あんたがハルカと会ってたこと知ってんだから!」 「うるせえな。何でもないって言ってんだろ!」  思えばコウタの影がちらつき始めた頃から、マキが笑わない日の方が多くなった。2人の言い争いは頻繁に私の眠りを妨げた。  楓、もう会えないのかな。つぶやく私にマキが答える。 「ハルカ、あの女、絶対許さない!」  マキとの会話はいつも少し難しい。  次に目が覚めた時は、私の前にマキとコウタともう1人いた。腕をつかみ、髪を引っ張り、罵りあう2人をコウタが辟易とした顔でとめる。  マキは突き飛ばされ、私の胸に激しくぶつかって床にうずくまった。マキは立ち上がりざま、私の横にあるシンク扉から包丁を取り出した。楓を半分に切った包丁だった。 「殺してやる! ハルカ、死ねッ!」  3人がもみ合う。楓が半分になって炒められたのと同じぐらいの時間が経っただろうか。1人がごとりと床に崩れ落ちた。 「どうすんだよ! 俺、捕まりたくないよ!」 「……コウタ、ノコギリ買ってきてよ」 「えっ?」 「いいから、ノコギリ買ってきなさいよ!!」
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