何も聞こえない夜をあなたに

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 楓を奪われた時にもうこれ以上愛しいものは必要ないと思ったが。世界の深遠から私に声をかけた誰かに、最後の機会を感謝する。  コウタたちが何等分かしたマキを私の中に詰めこもうとした時、今度こそ失敗しないと私は誓った。私の全身全霊をかけてマキを体中に迎え入れる。  会話が成り立たなくてもいいよ。私の中で誰の声も聞こえない夜を過ごそう。もう二度と奪わせはしない。  マキ、私が誰よりも冷たく抱きしめてあげる。
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