5人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「アルベルトさん、また内線432です。至急誰かを行かせてくれ、とのことですが……リーダーの貴方が話したほうが早いと思って。」
「は? 432って……自殺課だよな?」
頷いた部下を横目に、小さく息をつく。
自分がいるのは、死神の仕事を色々な奴に割り振る、統括課という場所。統括課と言われても、そこまで暇じゃない。
この世では、秒単位で人が生まれ、それと同時に秒単位で人が死んでいる。それに自殺ともなれば、必ず地獄行き。天国へ行くことは叶わないだろう。
そんな人達の話を聞き、しっかりと黄泉の国へ行ってもらう。迎えの死神で無理ならば、傾聴課という場所に連れて行く。
統括課にとって、一番厄介だと言われるのが、内線432……自殺課からの連絡だった。
「俺だ。どうした?」
『アルか、いい奴が出てくれた。日本の山間で自殺、首吊り。かなりの山奥のおかげで、魂が彷徨い続けてる。ようやく見つけたが、もはや死んでから大分経ってる。』
電話の向こうにいるのは、同期のレイルという男性。自ら自殺課に志願した物好きだ。
「はぁ……レイ、お前今時間あるか。」
『あるが……お前、まさか俺を巻き込んで一緒に迎えに行こうとか、そんなこと考えてないよな?』
ふっと電話口で笑った。
「そのまさか、だよ。レイル・アスラン・タナトス、くん?」
わざわざ本名で呼ぶな馬鹿、という言葉を最後に、電話が切れた。生者の国へ行く入口へ行かなくては。
最初のコメントを投稿しよう!