Scene01 終焉の魔王

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教室のドアを開ける。 包丁が落ちてくる。 普通に死ぬ。 でもカナタは元魔王だからこの程度では死なない。 ケタケタ笑う赤髪の少年ジル。 「死なないのかよ!」 とても楽しそうに笑う。 カナタは無視して椅子に座る。 痛い。 そう思ったのはあたらり前。 椅子に画鋲が敷かれていた。 でもカナタは死なない。 元魔王。 最強の魔王。 だから死なない。 普通の画鋲では死なない。 でもその画鋲には毒が仕込まれている。 なにもおきない。 だってカナタは魔王だから…… 「はぁ」 カナタは思わずため息を吐く。 「なんだ?文句あるのか?クソカナタ!」 カナタはぐっと堪える。 自分は最強の元魔王。 やろうと思えばジル程度の人間など首をはねることができる。 でもそれをしない。 なぜならカナタは自分より弱いものは傷つけない。 それが昔からの信念だからだ。 記憶が戻ったのは最近。 それと同時に魔力が復活した。 今までのことを思い出す。 でも怒りなど感じない。 かなしみも感じない。 ただ情けない。 そんな世界。 何が正解で何が間違いなのか。 カナタは思った。 それを受け入れるためにこの戯れに付き合おう。 そう思った。
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