TracK1

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 残念がってた瑞樹も、納得したようだ。シュンとしていた顔が、いつもの顔に戻っている。 「なーなー。何でキョウちゃんは、そのノック? にこだわってんの?」  そういえば大輝にも言ってなかった。何でNoKにこだわっているのか。  ほとんどNoKについて知らない二人なら、知ったところで騒がないだろう。同じバンドメンバーに秘密を作っていたら、後に何で言わなかったのかと問題になるかもしれない。 「黙っててくれるなら、言うけど……なんかお前は喋りそうだな」 「言っとくけど、俺、知りたがりのくせに、口は硬いよ?」  いつもヘラヘラしている大輝の顔が、スッと真面目な顔になった。それだけで雰囲気ががらりと変わる。ヘラヘラしたまま言われたら嘘だろうと思うが、真面目な顔で言われると、信憑性がある。 「ふーん。なら、その言葉を信じておくけど。……俺がNoKにこだわる理由は、NoKが俺だからだ」 「ん?」 「へ?」  頬杖をつきながらサラッと言う真実に、大輝と鋼太郎から驚きの声が出た。そして目を見開いたまま、動きが止まった。
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