TracK1

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 いつものスクールバッグに教科書とドラム教本を詰め込んだ。  朝はまだ少し寒い。白いワイシャツの上に学校指定のセーターを着てから学ランを羽織る。そしてバッグを持ち、一階のリビングへ向かった。 「恭也、おはよう。ご飯とお弁当、できてるわよ」  優しい声をかけたのは、伊智子(いちこ)ばあちゃん。  食卓では、もう(まもる)じいちゃんが朝ごはんを食べている。  俺も荷物を床に置いて、じいちゃんの向かいの席に座る。 「なぁ、じいちゃん」 「うん? なんだ?」  言いたいことがあって、声をかけると、じいちゃんは皺だらけの手を止めてジッと俺の顔を見た。 「俺さ、じいちゃんが前に言ってた、和菓子屋の子。あいつとバンドやることにしたんよ」 「和菓子屋……? ああ、片淵(かたぶち)さん()の孫か。なかなかいいんでねえか? あそこんちの爺さんも安心すんじゃろ。病院入ってもずっと孫の心配してたもんな。頑張れよ」 「うん」  田舎の情報網は驚くほど広く、そして早い。ささいなことでさえ、すぐに広まる。
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