12人が本棚に入れています
本棚に追加
いつものスクールバッグに教科書とドラム教本を詰め込んだ。
朝はまだ少し寒い。白いワイシャツの上に学校指定のセーターを着てから学ランを羽織る。そしてバッグを持ち、一階のリビングへ向かった。
「恭也、おはよう。ご飯とお弁当、できてるわよ」
優しい声をかけたのは、伊智子ばあちゃん。
食卓では、もう守じいちゃんが朝ごはんを食べている。
俺も荷物を床に置いて、じいちゃんの向かいの席に座る。
「なぁ、じいちゃん」
「うん? なんだ?」
言いたいことがあって、声をかけると、じいちゃんは皺だらけの手を止めてジッと俺の顔を見た。
「俺さ、じいちゃんが前に言ってた、和菓子屋の子。あいつとバンドやることにしたんよ」
「和菓子屋……? ああ、片淵さん家の孫か。なかなかいいんでねえか? あそこんちの爺さんも安心すんじゃろ。病院入ってもずっと孫の心配してたもんな。頑張れよ」
「うん」
田舎の情報網は驚くほど広く、そして早い。ささいなことでさえ、すぐに広まる。
最初のコメントを投稿しよう!