【完】雨はサヨナラを歌う

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 大体の憑き物筋の家系はその地域から煙たがられる存在だが、この家だけで完結しているのであればあまり噂にもならないだろうし、伝承も残りにくかったのだろう。 「大体お話はわかりました。それでは娘さんのご様子を見させていただきましょう」 「わかりました、ご案内いたします」  長い廊下を渡るとそこには見事な日本庭園があった。田舎であることを差し引いても広い家と見事な庭園はこの家がこの地域で相当な力を持つことの証左である。……おそらく昔は怪猫の力を使って家を大きくしていたのであろう。しかし近年になりその伝承が途絶え、祀られなくなった怪猫が障を起こしていると考えられた。  憑き物筋の憑き物自体は、それを祀られていさえすれば悪さをすることは少ない。地域で煙たがられることはあるが……しかし祀るるのをやめた場合、多くの障りをもたらす。近代化が進んだ昭和から平成にかけてそう言った家系が増え、我々のような稼業が一時期忙しくなった、と神川先生から聞いたことがある。
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