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捨てられた犬みたいな僕
あれから1週間
高杉さんから何もアクションも
何もないまま時間が過ぎる
時間が過ぎる事で
キスしたことも
告白したことも
高杉さんから忘れ去られていくのか
廊下ですれ違っても
目も合わせてくれない
俯くと涙が出そうになる
近くの非常口に入ると
壁に寄りかかり
しゃがんで顔を手で覆う
会社で淡々と業務を進めているが
一人の時のように
素直に過ごすことができない
現実(いま)に合わせているだけ
それもまた僕とは違う
勝手に自分に殻を作って
全てが嫌にさせる
まるで
捨てられた犬みたいな僕
廊下を歩いていると
正面から高杉が歩いてくる
出来るだけ不自然にならないように
すれ違う
「真壁」
高杉が話しかけた
ドキッ
真壁は一瞬固まる
「今日提出した企画書は
良い出来だった
頑張ったな
案件進めていいぞ」
ドキッ
ドキッ
高杉が優しく笑い、肩に手を置いた
真壁は真っ直ぐに高杉を見ることができない
「期待している」
何事もなかったように話しかける高杉
「はい、ありがとうございます」
真壁は頭を下げる
ドキドキ
ドキドキ
心臓が壊れそう
ふと高杉は真壁の肩先の匂いを嗅ぐ
「そういえば真壁、
今日のシャンプーの匂い、いつもと違うな」
肩先で微かに笑っている高杉に
真壁は微動だもできなくなる
高杉はそのまま廊下を歩いて行った
後ろ姿を見ながら
真壁は近くの資料室に入っていく
薄暗い部屋の隅でしゃがみ込む
顔が赤くなり
手で顔を覆う
一人になりたい
思えば思うほど
高杉の姿を見ただけで
濃厚なキスを思い出してしまった
「一人になりたくない」
真壁は心の底で思っている事を口にして
苛立ちから壁を叩いた
目から涙が溢れる
カタン…
扉が開く音がした
真壁は顔を上げると
そこに高杉が立っていた
「真壁?大丈夫か?」
高杉はびっくりした顔で
真壁に近づいてくる
「来ないで!」
逃げようとする真壁の腕を掴む
「そんな顔を見たら放っては置けない」
高杉が強く引き止める
掴む腕、高杉の荒い息遣いが真壁の心を揺さぶる
微かに香るコロンと高杉の香り
「お願い…見ないで
惨めな僕を見ないでよ!
高杉さんを見ると僕は
胸が張り裂けそうになる」
真壁は悲痛な想いで叫んだ
「そんな言い方
お前の好きになんかさせない」
高杉は真壁を抱きしめる
僕は何度も
高杉さんから強く言われ
傷ついている振りをしながら
高杉さんが
僕を汚していくのを
何処かで強く望んでいた
一人では癒せない心もまた
貴方との出会いから
いつからか
救われていく
(続くଘ(੭ˊ꒳ˋ)੭✧)
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