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いつまで続くか分からない、異様な雰囲気に居たたまれなくなった丹羽はお手洗いに行く振りをして席を立った。
事務所内から出てようやく大きく息を吐く。自身で感じていたよりも緊張していたようだ。
「おい」
声と同時に方に手を置かれ丹羽はビックリして振り返る。そこには向かいで作業していたはずの正木が立っていた。
手招きをされ、廊下の隅まで連れて行かれる。
「部長に何かあったかそれとなく聞いてくんねぇ?」
正木は事務所の扉の方を伺いながら言った。
「嫌よ。何で私が」
丹羽が考える間もなく断ると、弱弱しい声で「頼むよ」と懇願する。
「部長絶対になんかあったって。このままじゃ、皆気になって仕事になんねぇよ。丹羽には部長まだ当たり弱いだろ? 何か良い事があったなら俺が聞いてもいいけどさ……」
「他に何かあるの?」
口籠る正木に迫る。ジッと目を見つめ続けると圧に負けた正木が重い口を開けた。
「昨日さ、部長半休で午後帰っただろ?定期健診に引っ掛って再検査だって」
正木はそこで言葉を切ると少し口ごもり、声を潜めて続けた。
「……もしかしたら余命宣告でもされたんじゃ……」
「最低! そんな事思ってるのに私に聞きに行かせようとしてたの!?」
思わず声が大きくなってしまった丹羽を正木が自身の口元に指を当て「シー! シー!」と宥める。
「な、頼むよ」
「絶対にお断り!」
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