ストレスフリー

　原田のモニター試験から約1年後、政府からストレスフリープランが発表。
　現代のストレス社会からの開放を謳ったこの政策と共にあのブレスレットの完成品が満を持してお披露目された。
　これまでのモニター試験の結果をまとめた資料には様々な病気の改善、治療結果が公表され大きな注目を浴びる。そして驚くべき事に、国民の健康増進、医療費の抑制を目的として全国民に無料で配布されたのだった。

　配布が始まるとネットでの評価を知っていた若者を中心に装着が広がる。
　胡散臭い効果とよく分からない装置に懐疑的だった人間も、実際にその変化をその目で見ると次々と装着。そして、ほぼ全ての国民が装着するまでには半年もかからなかった。
　健康増進の目的で作られたブレスレットだったが、ストレスになる感情が無くなった事により、自殺や犯罪・イジメも減少した。

　それまでとは全く違う、他者を気遣い思いやりにあふれた理想的な社会がここに実現された。

　この大胆な政策を計画、実行した時の首相は国民の熱狂的な支持を受けた。