我らの世界

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さて、先に我々のことについて少し説明しておこう。 我々は一体何者であるかと申せば、それはきっと、誰もが一度は出会ったことがあるであろう。ふと目をつぶり、幼き頃を思い出して欲しい。 そう、我らは人間の最初のお友だちとして親しまれている「玩具(おもちゃ)」と呼ばれる物だ。 人間にとって、ただの道具でしかないかもしれない。 しかし我々にとっては、人間と一緒に過ごすことが最大の責務であり、生き甲斐でもあるのだ。 ただし、おもちゃには厳しい掟が存在する。人間の前では話したり動いたりすることは固く禁じられており、簡単には身動き出来ない身の上である。なぜならそれは、おもちゃ条例に定められているからだ。 実は、我々には意思も感情も兼ね備えている。しかし、この掟により条例に違反した者は直ちに処分されてしまう。 人間界において、我々が知らぬ間にいなくなっていることもあるだろう。それは、掟を破りし者の罰であり、自我を奮った罪を問われ、処分された者たちなのだ。 それについては、世の中を変えてしまう力が潜んでいるから、などと長い歴史の中で繰り返し語り継がれてきたのだが、詳しいことはよくわかっていない。 そのような過酷な掟の中で、日々模索する我々の唯一の楽しみといえば、たくまとの交流である。 先ほどと矛盾するようであるが、我らと心を通わせることの出来る三歳児までは、会話することも自ら触れ合うことも条例で許されている。 たくまとはその三歳児であり、我々と遊びを通して日々交流を深めているのである。
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