1-4 真夏の雪降る、裏側の世界

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・イザホのメモ(15ページ更新) 【https://estar.jp/novels/25875424/viewer?page=40&preview=1】 【ようこそ、××ちゃん】  ……名前のところだけ、黒く塗りつぶされている。その下にはちょっと崩れた文字で【10年ぶりだね】と書かれていた。 「これは、後から慌てて書き出したんじゃないかな?」  ホワイトボードを眺めていたマウが崩れた文字を指さしてつぶやいた。 「本当は特定の人に向けたメッセージだったけど、ある事情で伝える相手を変えるために名前のところを消した。黒く塗りつぶしたのは、その場に消すものがなかったからだね」  確かに、ホワイトボードに付いているトレイには黒いペンが置かれているけど、消すためのスポンジがない……確か、マグネットイレイサーっていうんだっけ? 「ブッブッ……ねえイザホ、このホワイトボードを伝えたい相手って、誰に変わったと思う?」  マウが不機嫌そうに鼻を鳴らしながらワタシの顔を見る。もうとっくにわかってるよ。それよりも、ここに来てからの期待がこの文字を見てより高まっている。 「……もしかして、わくわくしている? イザホの顔に怖いっていう感情が読み取れないよ」  首をかしげるマウに、その通りだよとうなずく。  ここまで見たことをメモに記入してから、ホワイトボードの横に懐中電灯を向けると、扉が見えた。部屋が別にあるのかな?  マウと一緒にうなずいてからその扉の前に立ち、ドアノブをひねった。  扉の先にあったのは……斧? 「……!! イザ――」  ワタシの身長と同じくらいの斧は倒れて、  ワタシの額に突き刺さった。  頭蓋骨を突き破り、頭の頂点から鼻の辺りまでヒビが入った感覚がした。  斧は思っていたよりも重くて、その勢いでワタシを押し倒す。  床に頭をぶつけた時、天井を赤い液体が横切っていった。
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