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1-5 作品と赤い絵の具と割れた顔面と
★イザホのメモ(NEW!)
【https://estar.jp/novels/25875424/viewer?page=14&preview=1】
「……イザホ……大丈夫?」
ワタシの顔の横で、マウが心配そうに声をかける。
顔に斧が刺さっているから首が動かせない。
目線をマウに向けて、まばたきで答えよう。
「……頭のど真ん中で本当によかった。左胸に当たったらと思うと……本当によかった」
マウはワタシの体の状態を見て、胸をなで下ろした。どうやら頭以外は無事みたい。
「あ、いけない。早く斧を引き抜かなきゃ」
小さな手で斧を引き抜こうとしてくれるマウだったけど、やっぱり斧はびくともしなかった。大丈夫、ワタシがやるよ。
左手で斧の柄をつかんで、震えるほど力を込めてゆっくりと引き抜く。
頭蓋骨から離れたのを確認したら、それを隣に置く。
銀色の斧はとてもよく磨かれていて、今にもぱっかりと割れそうなワタシの顔が鏡のように写し出されていた。
「イザホ、今から応急処置をするけど、体は起こせる?」
マウはタキシードのおなかに埋め込んだバックパックの紋章から包帯を取り出して、ワタシの顔をのぞき込んだ。
「じっとしていてね……」
体を起こすと、マウが後ろから包帯を頭に巻いてくれた。
その間に目線を落としてみると、着込んでいる黒のワンピースと白のパーカーに赤い絵の具が付着している。
周りを見てみると、まるで動物が大量出血したように赤い絵の具が床を染めていた。その中に、倒れたバケツがいくつかある。このバケツに入っていた絵の具が、こぼれたのかな?
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