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「今夜お泊りになる部屋を用意しました」 「ああ。でも…」 「クレアさんのお許しが出ました」  これを聞いたカロルは、ジョフの顔をまじまじと見た。  ジョフはちょっと苦笑いをしてから、さらりと言った。 「国王家と侯爵家の仲が悪いのはご存知ですよね?国王家から来た人を野宿させたなんて知れたら、大変なことになってしまいます」  これは本当のことである。中世の頃、国王家(マルク家)とエドバルド家は敵対関係にあった。  その後、両家の戦いはマルク家が勝利を収め、マルク家の当主はパブロ王国を建国して国王となった。エドバルド家は国王に和睦を申し入れ、国王はその印としてエドバルド家に爵位を与えたのである。  しかし、和睦はしても、両家の仲は悪いままだった。それは今日まで続いている。  ジョフはさっそくカロルを客室に案内した。 「部屋にはシャワーが付いています。夕食は7時にこの部屋に運びますので…」  カロルは、ふと疑問に思ったことがあったが、口には出さなかった。  侯爵が留守にしているのは聞いているが、侯爵の母上である前侯爵夫人も留守なのだろうか。本来なら、挨拶しなければいけないのだが。  機会があったら聞いてみよう。さすがに今日は疲れた。
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