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2.
「あれ?また元のところに戻ったぞ??」
カロルは自分が運転する黒塗りの車から降りて、辺りを見回した。
ここはすでにエドバルド侯爵の屋敷の敷地の中だった。
さっき通った石造りの正面門からお屋敷までは500メートルのはずだが、地形がいりくんでいるせいで、お屋敷の姿はまだ見えてこない。
カロルは、ため息とともに、ほんの少しだけネクタイを緩めた。
「スマホは繋がらないし…。う~ん、どうしよう」
紙の地図を見ながらブツブツ言っていると、後ろから軽トラックがやってきた。侯爵家の関係者に違いない。
カロルは軽トラに向かって大きく両手を振った。
「すみませ~ん。侯爵様のお屋敷に行きたいんですが」
「お屋敷に?」
停車した軽トラから降りてきたのは、背の高い作業服姿の男性だった。年齢は20代半ばくらいで、カロルよりもやや年上だろうか。心なしか眉をしかめているように見える。
「お屋敷に何かご用ですか」
「私は国王家からの伝令で…」
男性の目が、ぎろりとカロルを見た。
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