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 路上にそのまま取り残されたカロルだが、10分ほどで男性の軽トラが戻ってきたのでほっとした。  軽トラの助手席には、20代前半くらいの女性が乗っていた。やや赤みがかった茶色の髪と、ブラウンの瞳をしている。  軽トラでやって来た男性はジョフ、助手席に乗ってきた女性はクレアと名乗った。二人とも侯爵の屋敷で働いているという。 「侯爵家によると、王宮から使者が来るのは十時だったそうですね。30分の遅刻です」  汚れた作業服姿のクレアが、真正面からカロルを見据えて言った。 「国王家からの使者であろうと、遅刻は許されません。定刻通りにいらっしゃっていれば、案内の者が正面門で待っていました」  カロルは慌てて弁解した。 「申し訳ありません。道に迷ってしまって…」 (でも、正面門に人なんかいたかな?僕が道に迷ったのは門の中に入ってからで、正面門には約束の時間の10分前には着いてたんだけど…) 「侯爵はもう外出なさいました。お帰りは夕方以降です。今日はお帰りになられたほうがよろしいかと」 「も、もしもよろしければ、待たせていただきたいのですが…」  クレアのずけずけとした冷たい物言いに、カロルはすっかり怖気づいていた。
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