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3.
カロルは現在25歳で、王宮に就職して今年で4年目になる。
この王国の地方の、領地など自宅の土地の分しか持っていないような男爵家(ご先祖さまの時代はもっと広い領地を持っていたと、現男爵である祖父は主張している)の第三子で、カロルに爵位が回ってくる可能性はほとんどない。それで採用試験を受けて就職したのだ。
最も、現代では爵位を持っていても、ほとんどの者が生活のために働いているが。
「いいでしょう。ただし、歓待されるとは思わないでください。予定外の来客は、警備の者やメイドの負担になります。ましてや長居されるとなると…」
そこまで言われると、カロルはうなだれるしかなかった。
侯爵の屋敷に移動する時は、ジョフがカロルの車を運転した。セキュリティの一環だという。
後部座席に座って窓の外を見ていたカロルは、侯爵の屋敷を指し示す、小さな木製の道案内板を見て不審に思った。
(あれ?)
「あの案内板…」
そこはY字路で、道案内板に描いてある矢印は、右の道を行くと侯爵の屋敷に行くことを示していたが、ジョフは左の道に入ったのだ。
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