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「こちらの道でいいんですか?あそこの案内板は右の道を指していましたが」 「こちらで間違いありません。さっきの案内板は…、一度倒れて、誰かがいい加減にさしたのかもしれませんね」 「…」  カロルはさっき道に迷って、二度も元来た場所に戻るという体験をしていた。 (迷った原因は、あの案内板だ…)  それなら自分の落ち度ではない。  侯爵の屋敷の敷地の中の道路は、当然だが本屋で買った地図には詳しく書かれていない。カーナビももちろん使えない。スマホも繋がらないから、侯爵家に連絡もできなかった。  理不尽さを胸に抱えつつも、窓の外の景色を眺めていると、雑木林の丘をぐるりとまわったところに広がっていた風景は、一面の果樹園だった。 「これは…、葡萄ですか?」  カロルは思わず歓声をあげた。侯爵家はワイナリーを所有しているのだ。 「はい。あちらにはリンゴ畑と、奥には馬と羊の牧場もございます」 「素晴らしい眺めですね」
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