ヘイボン&アニータ

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 すると、彼女の小さな口が僅かに開き、静かに息を吸う音と共に、胸部がゆっくりと上下した。なんて細かい演出なんだ!  俺がなんとも形容しがたい背徳感に震える前で、メイドロボットは目を開いた。  くりくりの目がきらりと光り、俺と視線を合わせる。 「おはようございます。あなたがご主人様ですか?」  流暢なイタリア語。澄み渡る声で、彼女は言った。  機械的な濁りの一切ない声に俺はまたもドキッとした。 「ええと、うん。よろしく」  俺はどもりながらヘルメットを外して顔を見せ、片手を差し出して彼女が立ち上がるのを手伝う。 「ご奉仕専用ロボット、アニータです。誠意を込めて、ご奉仕させて頂きます」  メイドロボットはアニータと名乗り、ロングスカートの裾を少し摘まんで、【カーテシー】と呼ばれる慎ましいお辞儀をした。  うーん、可愛い。 「ご主人様のお名前を伺ってもよろしいですか?」 「うん。名前は――」  あれ? 名前が、出てこない。 「まぁその、平凡なやつだよ」  仕方なくそう答えた。 「ヘイボン様ですね? ヘイボン様!」 「えっ?」  気絶しそうなくらい可愛い笑顔で抱き着かれた。  俺の名前、ヘイボンで覚えられたらしいけど、まぁいいか。 「ところでヘイボン様、ここはどこですか?」  と、周囲を見渡すアニータの身長は一五〇センチ台。俺と頭一つ分の差。この身長差がまた絶妙に良い。 「ここは、その、俺にもよくわからないんだよね」  さてどう説明したものか。
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