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俺が装着している、頭からつま先までを覆う鎧――もといパワードスーツはイタリア製で、流線形のデザインが特徴だ。
この装備はつまるところ、俺がイタリア軍第十機甲師団の一員である証なわけで、国のために戦う年若き十代後半の兵士であることを意味する。
でもここはたぶん、地球ではないどこか別の惑星。
ではどうして兵士の俺がここにメイドロボットと一緒にいるのか。
「……神妙なお顔をして、どうなさったんですか?」
アニータが首を小さく傾げる仕草で、黒い短髪に黒目の、特筆する部分のない平凡な俺の顔をまじまじと覗き込む。ショートに切り揃えられふわりとした髪が揺れた。
「そ、それが、どうも記憶の一部が飛んでるみたいなんだよ」
照れた俺はヘルメットをかぶり直し、再びヘッドマウントディスプレイを起動させる。
自分の身元と、別世界へ転移したことは覚えているんだが、ここへ来る経緯の記憶が無い。
視覚カメラの映像記録を辿って、俺たちがどんな理由でここへ来たのかを探る。
そして思い出した。自分の名前も一緒に。
「……っ!」
俺は、逃げたんだ。戦場から。
俺たち地球人が戦う強敵――通称【デーモン】とかいう、正体のよくわからない奴らとの戦いから、このメイドロボットを抱えて逃げた。
ブロック世界から別のブロック世界へと移動できる装置――【ポータル】は、『もう無理恐い逃げたい! 命だいじに!』的な心境で科学者たちが血眼で作った革命的デバイス。
戦時中のポジティブなニュースとして話題になったものだ。
【デーモン】に街を奇襲された大混乱の最中、科学施設の警護をしていた俺は偶然にも、携帯電話と同じくらいの大きさをしたこの丸い【ポータル】を入手して、一か八かの賭けで転移したってわけだ。
ここが人間の生存に適した環境じゃなければそれでお陀仏だった。
「――思い出せましたか?」
「え? ま、まぁな。俺たちの街が敵に奇襲されて、君を守るために、咄嗟の判断で今に至る……」
大体合ってるけど、『どうせ死ぬくらいならカワイ子ちゃんを抱いたまま死にたい』というヤケを起こして、これまた偶然にも施設に寝かされていたこの子を攫っていったなんて言えない。
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