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博士の思い
助手は博士に『ティッシュケース』を渡した。
「冠婚葬祭、コンサートホール等、『人が多く集まることを禁止』しないといけなくなり、色んな事をするのに制限しないといけない問題がどんどんでてきた時代だったから・・・」
「その後に、お墓の問題もありましたね」
助手は、博士がどんな問題を解決した発明品なのかワクワクしながらきいた。
「人は生きていくには、色んな問題にぶち当たる、子供ができたらその子の将来をいつも心配しないといけない。自分に対しても年を取ったら、いつ大病をして寝たきりにならないか、健康に気を使いながら生きていかないといけない・・・」
博士はそう、ぶつぶつ言い始めた。助手は、少し博士の様子がおかしくなってきたのではと心配になった。
「もし君は、私の家族が元気にしていると言ったら驚くかな」 助手は、急な博士の発言に、やはり悲しみからまだ逃れられないで心を病まれているのかとと思いながら手を差し伸べていった。
「博士、ご自宅前に到着しました。」 博士は、そんな助手の心配をよそにスタスタと自宅に歩いていった。
「さあ、これが『究極の発明品』だ」 博士がさししめしたところには「二つの箱」があった。
「右側が妻で左側が娘だ、事故で脳死直前に取り出した脳が入っている」
驚いて声が出ない助手にお構いなく博士は話を続けた。
「二人とはちゃんと今でもコンタクトができる『バーチャル』だがね・・・」
博士が箱の横のスイッチをいれると博士の奥さんと娘さんの生前そのままの姿が投影された。
「どうかね2人の身体はもう、年を取らない、病気もしない、だからお墓の心配もいらない・・・人は色んな事に悩みを感じるが、この2人は暑さ寒さにたえないといけないストレスもない。そして悲しい別れにも・・・」
博士の目には大粒の涙が溢れていた。
助手は、それをみていった。
「・・博士。残念ですがこの発明品は、私たちの心の箱の中に静かにしまっておきませんか?・・」
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