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怒れるヒーロー
「誰だ⁉」
「誰でもいい! 彼女から離れなさい! この下種ども‼」
戸を開けた記憶もないまま、片腕を振り払うようにして声を張った途端、男たちが弾き飛ばされて転がった。普通ならそれを不思議に思うところだが激怒していた結城はそれに気付かない。倒れ込んだ傷だらけの香崎に目を潤ませ、叫んだ。
「お前らのような奴らがいなければ皆まともに働けるのに‼」
野太い悲鳴が反響して結城は耳を塞いだ。新見含む取り巻き7人が耳を塞いだり、体を丸めたりして許しを請う。
「痛い、痛い、許してくれぇ!」
「悪かった! 悪かったから、詰め寄るなぁぁぁぁ!」
何が起きているんだろう。何もしていないのに涙と鼻水と汗でぐしゃぐしゃな顔で必死に許しを請う男たちを見下して視界に薄い紫の布が目に入って首を傾げた。自分、こんなスカートを履いていただろうか。
「……え」
ごつい編み上げブーツ、紫の袴、銀の鎧と手甲が装着されている。しゃらりという音が耳の近くでした。三日月のアクセサリーが意識しなければわからない薄い布を留めているようだ。どうやらその布が顔を相手からは見えないようにしているらしい。茫然と動きを止めた背後から苦笑じみた声がした。
「やっぱりヒーローだった。いきなり戸を壊すとは思わなかったけど」
慌てて振り返れば患部なきまで破壊された戸の残骸が散らばっていた。そこに楽し気に腕を組んで立っている木河がいた。
「能力は反射かな? 相手が与えてきた苦痛をそのまま返す。恨みもかな? 懲らしめには最適だね」
木河は結城の横を擦り抜けて香崎の抱き上げて戻ってくると目くばせした。このまま放っておいていいのか悩んだのは一瞬。香崎が戻ったのだからそっちが優先に決まっている。
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