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序章
いつの日かふたたび《あの方》があらわれると信じている。ワタシは《あの方》を迎えに行かなければならない。
《あの方》は十字架を背負いながら処刑場のある丘をめざし、ワタシは《あの方》にひたいの汗をぬぐうようヴェールを差し出す。すると奇跡がおき返されたヴェールには《あの方》の顔が浮かびあがった。やがて《あの方》はすべてをつかさどるものから迎えられるために、その身をささげるだろう。
でも《あの方》がいつあらわれ、十字架を背負いながらどこの丘をめざすのかもわからない。そもそも《あの方》の顔さえ知らないのだから、ほんとうに《あの方》を迎えることができるのだろうか。
こんな有象無象の輩が蔓延る大都会で……
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