永遠の愛に微笑む

2/10
前へ
/11ページ
次へ
― ―――― ―――――――――  三か月後 「上手くいったんだ」 「ああ……、まあな」  あの子と付き合うことになった。  きっかけはもちろん彼女のおかげだ。どんな手を使ったのかしらないが、いつの間にか彼女はあの子と友達になっていた。それをきっかけに紹介され、あの子と過ごす時間が増えた。思った通りあの子は可愛くて、少しドジで、明るくて元気で、心優しい子だった。最初はあまり話さない俺に少し苦手意識を持っていたと思う。けど、それも時間とともに、だんだんと距離も縮まって、ついには付き合えることになった。その屋上での告白の帰りに、彼女に会ったのだ。  だが少し、気まずかった。  彼女のサポートのおかげでうまくいったことは確かだ。だけど、少なからず告白してくれた子だ。彼女が進んで協力してくれたが、なんて思われているか怖かった。  なんて、気遣っている俺に気づかず、目の前の彼女は嬉しそうに軽くパチパチと拍手をしていた。   「よかったじゃん。おめでと!」  しかし彼女は予想に反して、本当にうれしそうに笑っていた。その表情になぜか俺はむっとした。 「……なあ、お前ほんとに俺のこと好きだったのかよ」  あまりに嬉しそうに笑うものだから、あの時の告白は本当は俺に俺の意中の相手を聞き出すためにしたのではないかと疑ってしまう。正直、彼女ならありえそうだ。普通は好きな相手が別の相手と付き合うことになったとなれば多少なれど落ち込むものではないだろうか。なんて言える立場ではないが、彼女の感情が読めなさ過ぎてそう疑ってしまう。  そう聞いたときピタッと拍手が止んだ。それに反応してふと彼女を見る。その表情はあの時と同じように、悲し気に微笑んでいた。 「……私は今も君が好きだよ。私は、嘘はつかない」 「……」  思わなかった解答に思わずぐっと喉を詰まらせた。すると彼女は吹き出して笑った。 「なんて答えればいいかわからない顔してるね。別に気にしなくていいよ、笑い飛ばしてくれて」 「……笑わねぇよ」 「君のそういうところ……いいと思うよ」  きっと好きなところ、と言いかけたんだと思う。けど言わなかった。そう言うと俺が困ることをわかっていたから。それをさせてしまったのは俺自身だ。  ずっと俺のそばにいたのも、俺を理解してくれたのも、彼女だけだったのに。俺は彼女に何も返してやれない。  すると彼女は「先に帰るね」と笑顔で言って俺に背を向けた。  最初の方はあまり表情がないと思っていたが、最近はよく笑うようになった。それはあの子がそばにいるようになってからだ。よく笑うあの子に少なからず影響されたのだろう。  しかしいつも俺の前で笑う彼女は、いつも悲し気だった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加