ある喫茶店のお客さん

4/4
前へ
/5ページ
次へ
 店長さんは、10年前の事件について話してくれた。  10年前、この喫茶店【セイラム】の近くのキャンプ地に6人のキャンプ客が訪れていた。事件が起きたのは、キャンプの初日を終えた翌日の朝だった。  キャンプ客の泊まっていたコテージの客室から、キャンプ客の小さな女の子以外が姿を消した。キャンプ指導員と現地で合流した警察は5人の行方を捜したものの、見つからないまま1日が過ぎていった。  その翌日、小さな女の子までもが姿を消した。慌てるキャンプ指導員と警察だったが、小さい女の子はすぐに見つかった。  コテージから少し離れた森の中、開けた場所、  女の子は膝に見知らぬ少女の生首を置いて、その生首に語りかけていた。  その足元に散らばる、胴体、右腕、左腕、右足、左足……それら5つの部位は、姿を消した5人のキャンプ客の物だった。  この状況について女の子にたずねると、女の子はこう答えた。 「羊の顔をしたおじさんが、見せてくれたの」  警察は女の子からその人物についてたずね、犯人と思わしき人物像を聞き出した。全身を黒いコートで身を包んだ、大柄な男。その頭には羊の頭が被っており、素顔はわからない。  その情報から犯人の行方を捜索する警察たち。しかし、犯人の行方はおろか、5人のキャンプ客の他の部位、そして、6人目の被害者である生首の身元すら分からないまま、事件は迷宮入りした。  それから、この街に奇妙な都市伝説が広まった。  真夜中の森を歩くと、羊の頭を持った悪魔“バフォメット”に襲われる。  もしも捕まってしまうと、体の部位をひとつ切り落とされ、  裏側の世界に連れて行かれる…… ――SFダークファンタジー・ボックスガーデンサスペンス―― 6d5f9fb2-f01a-4549-85df-1522834c854a
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加