ある喫茶店のお客さん

1/4
前へ
/5ページ
次へ

ある喫茶店のお客さん

 午後8時、ワタシはウサギの“マウ”とともに喫茶店【セイラム】に来ていた。  マウはワタシの大切な友達。  ウサギなのに、紋章と呼ばれる魔力を体の中に埋め込む技術のおかげで、二足歩行で歩いたりおしゃべりすることができる。  この紋章の技術は、今は人々の間に普及している。  ワタシのお母さまも体に紋章を埋め込んでいるし、もちろん、ワタシだって埋め込んでいる。  この紋章に触れることで、それぞれの紋章の効果を発動することができるのだ。  メニュー表をマウと一緒に眺めて、マウが店長さんに注文してくれた。  待っている間、マウは「今のうちに“フジマル”さんに連絡しておいたら?」と言ってくれた。よく考えてみると、確かにいい案。自動車がパンクしちゃたから、迎えに来てくれたら助かる。  “フジマル”さんはお母さまの親戚で、この鳥羽差市で探偵事務所を構えている。ワタシたちはそこの助手として働くことになっていて、お母さまからは、困ったことがあったらフジマルさんに連絡しなさいと、言われていた。  左手の大きな手のひらを見ると、緑色に光る紋章があった。形は縦方向に長い長方形……スマートフォンの形をしているんだっけ。その紋章を右手の人差し指で触れると青色に変わり、そこからスマホの形をした半透明のモニターが浮かび上がった。  モニターをスライドして、SNSのアプリを開く。そして、フジマルさん宛に車のパンクのことと喫茶店【セイラム】にいることをメッセージとして書き込み、送信した。返事はすぐに帰ってこなかったけど、後で連絡が帰ってくるよね。  そのころ、イイにおいがしてきた。 ・マウの顔を見る 【https://estar.jp/novels/25875424/viewer?page=1】  やがてワタシの前に出てきたのは、カレーライス……のはずだけど、なにか違う。ルーの色が少し濃い、それに具材の大きさも違う……なにより、チーズが乗ってない……
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加