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一緒にいきましょう?
※Twitterで公開した小話を修正。
※お題『彼岸花』を元に制作した作品です。
使用した花言葉:孤独、再会、諦め、転生、悲しい思い出、思うはあなた一人、また会う日を楽しみに
※制作日:2020年4月11日
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赤い花が咲く川の横で、君と出会った。
「こんにちは」と頭を下げてきた君に「こんにちは」と僕も頭を下げ返す。
「どちらまで?」
「向こうまで」
問いかけられたそれに返答しながら、僕は川の向こうを指さした。
「じゃあ一緒にいきましょう?」と言われた。どうやら向かう先が同じだったらしい。
君と並んで歩く。すると途中、何かに足をひっかけて転んだ。足元を見ると小さな石があった。
「大丈夫ですか?」と君が心配そうに声をかけてきた。「いつもの事です」と諦め気味に返す。
本当の事だった。僕は些細な事で躓いて、転んで立ち上がれなくなる。昔からそんな奴だった。
「大丈夫」と君が僕に手を差し出した。
「一人では立てないかもしれない。でも差し出された手で立つ事はできる筈」
「立てれば、あとは一人で歩けるでしょう?」そう言って、君は僕を引っ張り立たせた。呆然とする僕に微笑みを向けながら、その手を離す。
「ほら、一緒に生きましょう?」
川の向こうに辿り着く。白くて眩しいそこを越えた先、きっと僕らはまた同じ世界に生まれる。
悲しみと不安は、なぜかもうどこにもなかった。まっさらな新しい世界へ向かう。
もしまた人に生まれ変われたら、「こんにちは」と、もう一度君に頭を下げたいな。
そんな事を思った。
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