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運命の選択
「……さん、……さん!」
俺の名前を呼ぶ声がした。
その方向をみると、なんとカオリさんがいた! さっきまで思い出していた彼女の姿を見て、思わず
「ひ、久しぶりだね」
と、元気に返事をした。
「はい! あなたに逢いに来ました!」
まるで心の中に響くような声がする。彼女は10年ぐらい前に会った時と変わらず美しい姿をしている。その姿を見たからなのか、さっきまでの息苦しさが嘘のように消えていた。
しかも、俺に逢いに来てくれたと言う。もう何十年ぶりだろうか、胸に高鳴りを覚えていた。
「逢いにに来てくれたの!? うれしいよ」
「ありがとうございます。あの、その……」
「ん? どうしたんだい?」
少し恥じらいをみせて、彼女は、
「最近旦那とうまくいかなくて……、あなたなら、この気持ち、分かってくれると思って来たんです」
「……?」
「実は私、高校を卒業する時、別れたくは無かったんです」
「それは、俺もだよ。でも当時は仕方なかったんだ。今みたいにスマホで簡単に連絡が取れる訳でもないし」
「私もそう思いました。でも、今にして思えば、それは間違いでした。あの時、あなたを追いかけて行くべきだったんです」
カオリさんが急にまくし立ててきた。まずは一旦落ちついて話を聞こうと思い。
「と、とりあえず落ちついて」
「落ちついてられません。旦那は家のことはほとんどせず、休みの日は寝てるかギャンブルに行っちゃうし、育児はワンオペ。こんな生活もう耐えられません」
「そ、それは」
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