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「なぁ、婆さんや。今日初めてシュンの保育園にお迎えに行ったんじゃよ」
源一郎はシュンと摘んできた野菊の花を供え、仏壇に向かって話しかけていた。
源一郎はこの夏から娘の菜穂子と同居するようになった。
菜穂子の夫、つまりシュンの父親は、シュンが3歳の時に交通事故で他界していた。
もともと共働きだった菜穂子は、近所の先輩ママに保育園のお迎えと、菜穂子が帰宅するまでの時間、シュンを預かってもらっていた。
そのママさんが、旦那の転勤で引っ越すことになったのだ。それをきっかけに、一人暮らしをしていた源一郎を呼び寄せて同居することになったのだ。
なあ、婆さん。嬉しいよなぁ。ワシが迎えに行くとシュンが喜んでくれるんじゃよ。
ワシにもまだ役目があるなんてなぁ。
しかも、たったそれだけのことで「ありがとう」って言ってくれるんじゃよ。
人生、まだまだ生きていく甲斐があるってもんだねぇ。
ありがたや、ありがたや。
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