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腰に貼られた湿布の匂いが鼻をくすぐる。この匂いを嗅ぐと婆ちゃんを思い出す。まさか自分も腰を痛めて寝込むことになるなんて、思いもよらなかった。
終戦後、すぐに建てた我が家。急な階段が次第にきつくなり、最後は這わないと登れなくなっていた婆ちゃん。
大げさだと思ってたけど、本当にそうだった。婆ちゃんが這って登った階段を、僕も今日這って登った。
『ケツのチョイ上に2枚縦並び』という湿布も、婆ちゃんとおそろいだ。肩も痛めて腰に手が回らない婆ちゃんに、毎日湿布を貼ってやったのは僕だ。
毎日年寄りのケツを見るなんて嫌だった。けど今日は自分だって、父親にケツを見せたんだ。
こんな痛みを抱えて、婆ちゃんは90まで生きたのだろうか。こんなつらい目に遭いながら、毎日を過ごしていたのだろうか。
そんな婆ちゃんに、僕は何をしてあげられただろうか。もっとしてあげることがあったんじゃないだろうか。
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